小児眼科について
生まれたばかりの赤ちゃんの視力は明るさを認識できる程度ですが、乳幼児から小児期にかけて様々なものを見ることで、視力が発達していきます。そのため、この時期に眼の病気がある場合に適切な治療を受けないと、視力の発達が遅れてしまったり、弱視になってしまうケースもあります。お子様の未来のために病気の早期発見・早期治療を心がけましょう。
幼児の弱視に注意
弱視はメガネやコンタクトレンズで矯正しても充分な視力が出ない状態です。かなり強い弱視の場合は見えにくそうな素振りが伺えることもありますが、これはとてもまれです。ご本人はもちろん、ご両親も全く気づいていないケースが多く、眼科での検査を受けて初めて弱視を発見できることがほとんどです。ただし、弱視は早い時期にメガネやアイパッチを使用した治療を行うことで、改善を試みることが可能です。
弱視の治療
弱視治療は年齢が早い段階で始めるほど治療の効果を望みやすくなります。お子様の状態にもよりますが、3歳~5歳頃までには治療を開始できることが理想です。弱視の治療は、医師の指導の下で目の状態に合ったメガネをかけることが基本です。視力は学習やスポーツだけでなく、日常生活にも大きな影響を及ぼします。成長してから運転免許の取得や職業選択に影響の出る可能性もありますので、お子様の視力に少しでも不安がありましたら、眼科を受診されて下さい。
子どもの近視(マイオピン治療のご案内)
裸眼のままで近くの物にピントは合いますが、遠くの物には焦点が合わず、ぼやけて見える屈折異常が近視です。義務教育期間は毎年定期健診がありますが、「B判定」だった場合には眼科医の受診をおすすめしています。現在は近視の進行を効果的に防ぐ目薬なども開発されています。近視は適切な矯正をしないと将来、強度近視になるリスクがあります。強度近視は単純に遠くが見えにくいだけでなく、黄斑変性症などの重大な眼科疾患につながる可能性もあるため注意が必要です。
マイオピンによる近視抑制治療
当院では、近視抑制効果が期待される点眼薬「マイオピン」を使用する治療を取り入れています。(0.01%、0.25%の2種類をご用意しております。)
「マイオピン(低濃度アトロピン配合)点眼薬」とは、小児期の近視進行を軽減させることを目的に、アトロピンを0.01%配合させた点眼薬です。Singapore National Eye Centre(SNEC:シンガポール国立眼科センター)の研究に基づいて開発され、統計的にも臨床的にも、近視抑制に有意義な効果が得られるとされる治療法です。現時点では日本国内において未承認の薬であるため、保険適用外の自費扱いですが、近年では日本でも7大学(旭川医科大学、大阪大学、川崎医科大学、京都府立医科大学、慶応大学、筑波大学、日本医科大学)にて臨床研究が進められています。
近視の進行を抑制することが大切な理由
子どもの近視は、主に眼球が楕円形に伸びてしまう(眼軸長が伸びる)ことで、ピント位置がずれることにより生じるケースが多くあります。身長が急激に伸びる時期に近視が進みやすいのは、身体の成長に伴って眼軸長も伸びる傾向があるからという説もあります。それだけでなく、ゲームやタブレットなどで近くを注視することが習慣化すると近視になりやすく、伸びてしまった眼軸長が戻ることはありません。そのため、眼軸長の伸びを抑えることが、近視の進行を抑制するために重要なのです。低濃度アトロピン(マイオピン)には、眼軸長を伸展させる働きに関連するムスカリン受容体をブロックする効果があると言われています。
マイオピンの特徴と安全性
◆副作用がほぼ皆無の良好な近視抑制薬と言われています。
◆近視の進行を平均60%軽減させると言われています。
◆日中の光のまぶしさに影響を及ぼさないため、サングラスもほぼ不要です。
◆近見視力の低下にほぼ影響を与えず、進行性眼鏡も不要と言われています。
◆毎日就寝前に1滴ずつ点眼するだけの、非常に簡単な治療法です。
◆点眼薬(1本・5ml)は両眼用で1ヶ月の使い切りです。
◆点眼薬はGMP(医薬品製造管理及び品質管理基準)準拠の工場で製造されています。
マイオピン治療が向いているお子様
◆6~12歳前後のお子様
◆近視の状態が軽・中程度(-1.0Dから-6.0D)のお子様
◆1~3ヶ月毎の定期的な診察が可能なお子様
処方について
まずはお子様の視力について、医師・スタッフにご相談下さい。お子様の眼の状態を丁寧に診察・検査した後、十分なご説明の上で保護者様のご希望があれば、マイオピン点眼薬を処方致します。点眼は就寝前に毎晩、両眼へ1滴ずつ行って頂きます。処方後は1~3ヶ月毎に検査・診察のために受診して頂くことをおすすめ致します。
※マイオピンを使用しても、近視の進行が完全に止まるわけではありません。
お子様の年齢にもよりますが、少なくとも2年間継続してお使い頂くことで、何もしない方と比べて近視の進行を平均60%前後軽減しうるという臨床報告を基に治療を進めて参ります。同時に、9%の患者様には無効であったとするデータも存在致します。保護者様には過度の期待を持たせてしまうことのないよう、丁寧なご説明を心がけております。下記サイトもご参照の上、まずはお気軽にご相談下さい。
斜視について
片目は対象物に正しく向かっていて、もう片方が別の方向を向いている状態で、目の筋肉や神経などの異常、遺伝的な要因などによって起こります。まれですが、目のがんや先天性白内障といった重篤な病気の初期症状として斜視が起こるケースもありますので、お子様の斜視に気付いたら早めに眼科医を受診して下さい。
はやり目 (流行性角結膜炎)
伝染力が強いウイルス性結膜炎です。原因となるのはアデノウイルスで、家庭内感染や学校内の集団感染を起こすケースがよく見られます。そのため、流行性角結膜炎と診断された場合、医師の許可が出るまで保育園や幼稚園への通園ができなくなることがあります。
はやり目になったり、その疑いがある場合、他の方が触れる可能性があるものをできるだけ触らせないようにして、ご家族や身近な方の感染を防ぐことも重要です。